「この子の特性を、強みに変えてあげなくちゃ」
そう思うと、少し苦しくなることはありませんか。
こだわりが強い。切り替えが苦手。好きなことばかりに夢中になる。音や光に敏感。言葉だけでは伝わりにくい。
そのような姿を見ると、「将来、大丈夫かな」「苦手を直してあげたほうがいいのかな」と心配になることもあると思います。
でも、特性を味方にする育児は、すべての苦手を長所へ言い換えることではありません。
その子がどのように感じ、どのような方法なら分かりやすいのかを知り、力を出しやすい環境を一緒に探すこと。
それが、「特性を味方にする育児」のはじまりです。
「特性を味方にする」って、どういうこと?
特性を味方にするとは、困っていることを見ないふりすることでも、「個性だから大丈夫」と我慢させることでもありません。
苦手な場面では、困りにくくなる方法を考える。得意な場面では、その力を安心して使えるようにする。
つまり、子どもを無理に環境へ合わせ続けるのではなく、子どもと環境の間にある「合いにくさ」を少しずつ整えていくことです。
発達障害情報・支援センターも、困難は本人の側だけで生じるのではなく、環境との相互作用によって生じると説明しています。
子どもの努力だけに任せず、伝え方や過ごす場所を変えてみる。それだけで、同じ特性の見え方が変わることがあります。

同じ特性でも、環境によって見え方が変わる
こだわりが強い
急な予定変更があると、不安になったり動けなくなったりすることがあります。一方で、手順が分かり、落ち着ける環境では、決めたことを丁寧に続けられる場合があります。
「こだわらないようにする」だけではなく、予定を前もって伝える、変更を目で見える形にする、安心できる手順を一緒に作る、といった工夫が役立つことがあります。
好きなことに夢中になる
周囲の声が届かないほど集中し、生活の切り替えが難しくなることがあります。しかし、その興味は、学ぶ入口になることもあります。
電車が好きなら、数字、地図、時間、文字へ興味を広げられるかもしれません。動物が好きなら、読む、調べる、描く、伝えることにつながるかもしれません。
好きなことを取り上げるのではなく、生活との区切りを作りながら、学びや会話の橋にしていきます。
音や光、においなどに敏感
大きな音やまぶしい光で疲れやすく、人が平気な場所でもつらく感じることがあります。
我慢する練習だけを続けるのではなく、静かな場所へ移動する、イヤーマフなどを検討する、刺激の少ない時間帯を選ぶことも大切です。
「わがまま」ではなく、「この刺激がつらいのかもしれない」と気づけると、子どもは自分を守る方法を覚えやすくなります。
言葉より、目で見たほうが分かりやすい
長い説明や曖昧な言い方では、何をすればよいのか分からないことがあります。そのようなときは、写真、絵、予定表、手順カードなどが助けになる場合があります。
言葉で分からないことを責めるのではなく、分かりやすい入口を変えてみる。これも、特性を味方にする工夫です。

最初に探したいのは、「できた条件」
子どもの特性を知ろうとすると、「できなかったこと」ばかりに目が向きやすくなります。
そこで、できなかった理由と一緒に、「できたときは何が違ったのか」も見てみます。
- どのような場所なら落ち着けたか
- 誰と一緒のときに安心していたか
- どのような伝え方なら動けたか
- 好きなものを使うと理解しやすかったか
- 時間帯や体調による違いはあったか
- どのくらいの量なら最後までできたか
「できた」の中には、その子に合う方法のヒントが隠れています。
できるか、できないかではなく、どのような条件ならできるのか。
この見方に変わると、育児は「直すこと」から「一緒に探すこと」へ少しずつ変わっていきます。

家庭でできる5つの工夫
1.言葉を短く、具体的にする
「ちゃんとして」「少し待って」ではなく、「椅子に座る」「時計の針がここまで待つ」のように、行動が分かる言葉で伝えます。
2.目で見える形にする
今日の予定、やることの順番、終わりの時間を、写真やイラスト、文字で示します。見通しが持てることで、不安が減る子どももいます。
3.好きなことを入口にする
苦手なことだけを繰り返すのではなく、好きな色、キャラクター、乗り物、音楽などを使い、取り組みやすい入口を作ります。
4.小さな段階に分ける
一度に全部できることを目指さず、「ここまでならできそう」という小さな段階から始めます。できた経験を重ねることは、次の一歩につながります。
5.子どもが選べる場面を作る
「これをしなさい」だけで進めず、「赤と青、どちらを使う?」「先に着替える? それとも歯みがき?」など、分かりやすい選択肢を用意します。
自分で選べた経験は、自分に合う方法を知り、必要な助けを伝える力へつながっていきます。

苦手さを「個性だから」で終わらせない
特性を味方にするという言葉は、温かく聞こえます。でも、本人が苦しんでいることまで「それも個性だよ」と片づけてはいけません。
眠れない。食べられない。学校へ行くことがつらい。自分や周囲を傷つけてしまう。安全を守ることが難しい。
そのような困りごとがあるときは、家庭だけで抱え込まず、主治医、発達支援センター、相談支援事業所、園や学校などへ相談してください。
支援を受けることは、特性を否定することではありません。その子が安心して力を使うための土台を整えることです。
飛び出しや無断外出など、安全に関わる行動については、こちらの記事で理由の考え方と家庭での備えをまとめています。
子どもが突然、外へ走り出すのはなぜ?|“特性を知る”ことから始める育児
親が、すべてを完璧に分からなくてもいい
子どもの特性を知ろうとしても、理由が分からない日はあります。昨日できたことが、今日はできないこともあります。
親の関わり方が悪かったからとは限りません。体調、睡眠、周囲の音、予定の変更、言葉にできない不安など、たくさんのものが重なっていることがあります。
すぐに答えを出すことより、「この子には、どのように見えているのだろう」と考え続けることが大切です。
そして、親自身にも休むことや、誰かへ相談することが必要です。親が一人で、その子のすべてを理解し、支え続けなくてもいいのです。

まとめ
特性を味方にする育児とは、子どもの苦手を無理に長所へ変えることではありません。
- その子の感じ方や分かり方を知る
- 困りにくい環境を整える
- できた条件を見つける
- 好きなことを学びの入口にする
- 小さな成功を一緒に積み重ねる
- 必要なときは周囲の支援を借りる
子どもを変えることから始めるのではなく、その子に合う方法を探すことから始める。
特性は、無理に消すものでも、無理に長所へ変えるものでもありません。
その子が自分の特性を知り、困ったときに助けを求め、得意な場面で力を使えるようにする。
そのための方法を、親子で少しずつ見つけていく。それが、「特性を味方にする育児」なのだと思います。
参考情報
※この記事は一般的な情報をお伝えするものです。特性の表れ方や必要な支援は一人ひとり異なります。生活や安全に関わる困りごとがある場合は、医療機関や地域の相談窓口へご相談ください。
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